執筆: 山野 健太 / 公開: 2026年8月27日 / 更新: 2026年10月4日
ばねを引けば伸び、手を離せば戻る。当たり前に見えるこの動きの中には、「力を目に見える長さに変換する」という、測定の歴史を支えてきた大発明が隠れています。中学1年の理科で学ぶ弾性力を、順番に見ていきましょう。
ばねやゴムのように、力を加えると変形し、力を除くと元の形に戻る性質を弾性といいます。そして、変形した物体が元に戻ろうとして周りに及ぼす力が弾性力です。
ばねを10cm伸ばして手で持っているとき、ばねはあなたの手を10cm分の力で引き返しています。伸ばせば伸ばすほど引き返す力は強くなる——ばねを引いたことのある人なら、誰でも体で知っている感覚です。
この「伸ばすほど強くなる」関係を、17世紀イギリスの科学者ロバート・フックが正確に言い当てました。
たとえば、あるばねに100gのおもりを吊るして2cm伸びたなら、200gなら4cm、300gなら6cm伸びます。力が2倍なら伸びも2倍、3倍なら3倍。グラフに描くと原点を通るまっすぐな直線になります。この単純さこそが、ばねを「測る道具」に変えました。
フックの法則が成り立つなら、伸びた長さを見れば加わっている力がわかるはずです。これがばねばかりの原理です。ばねに目盛りをつけるだけで、force(力)という目に見えないものを、長さという目に見えるものに変換できます。理科の実験で使うばねばかりも、市場で魚を吊るして量るはかりも、体重計の中のばねも、みんな同じ仕組みです。
ただし、フックの法則には有効範囲があります。ばねを思いきり引き伸ばしてしまうと、手を離しても元の長さに戻らず、伸びきったままになります。この境目を弾性の限界と呼びます。
限界を超えたばねは、内部の金属の構造そのものが変わってしまい、もう正確な弾性力を発揮できません。ばねばかりで測れる重さに上限が決まっているのは、これが理由です。おもちゃのばねを伸ばして遊んで戻らなくなった経験がある人は、弾性の限界を実体験済みということになります。
意識して探すと、ばねは生活のあらゆる場所にあります。
どれも「変形すると戻ろうとする」という同じ性質を、跳ねる・吸収する・挟むという別々の目的に使い分けています。
「のびは力に比例する」と分かったら、次はどれくらい比例するかを数字にします。それがばね定数です。
ばね定数 = 加えた力 ÷ のび
単位は N/m(1 m のばすのに必要な力)や N/cm を使います。数字が大きいほど「かたいばね」、小さいほど「やわらかいばね」です。
100 g のおもりが引く力は約 1 N です。これで 2 cm のびるばねなら、ばね定数は 1 ÷ 2 = 0.5 N/cm(= 50 N/m)。このばねに 300 g(約 3 N)を吊るせば、のびは 3 ÷ 0.5 = 6 cm と計算できます。記事の前半で挙げた「100 g で 2 cm、300 g で 6 cm」は、この割り算の結果です。
同じばね2本を横に並べて同じおもりを支えると、1本あたりの負担が半分になるので、のびも半分になります。全体としては、ばね定数が2倍のかたいばねと同じふるまいです。
逆に縦につなぐと、どちらのばねにも同じ力がかかるため、のびは2本ぶんで2倍になります。ばね定数は半分、つまりやわらかくなります。ベッドやクルマのサスペンションの「かたさ」は、ばねの本数と並べ方でも調整できるということです。
1円玉はちょうど 1 g です。輪ゴムやばねに紙コップを吊るし、1円玉を1枚ずつ増やしながら定規でのびを測ると、枚数とのびのグラフが描けます。直線になればフックの法則どおり。途中からグラフが寝てきたら、そこが弾性の限界です。輪ゴムでやると直線から外れやすく、金属のばねとの違いがはっきり見えます。
ばねやゴムのように変形した物体が、元の形に戻ろうとして生む力です。手を離せば元に戻る変形を弾性変形といい、そのときにはたらく力が弾性力です。
ばねの伸びは、加えた力の大きさに比例するという法則です。100gのおもりで2cm伸びるばねなら、200gでは4cm伸びます。ばねばかりが目盛りを等間隔に刻めるのはこの法則のおかげです。
弾性の限界を超えると、手を離しても元の長さに戻らなくなります(塑性変形)。フックの法則が成り立つのは、この限界より内側の範囲だけです。
フックの法則です。ばねの伸びは、加えた力の大きさに比例します。100gのおもりで2cm伸びるばねなら、200gで4cm、300gで6cm伸びます。ただし、伸ばしすぎて弾性の限界を超えると、この関係は成り立たなくなります。