公開: 2026年8月27日
滑車(かっしゃ)は、溝のついた円板にロープをかけて回転させる、とてもシンプルな道具です。小学6年の理科で「てこ」と並んで登場します。部品は円板とロープだけなのに、使い方しだいで「向きを変える道具」にも「力を半分にする道具」にもなります。この違いを順番に見ていきましょう。
定滑車(ていかっしゃ)は、天井や柱に固定されて、その場で回転するだけの滑車です。井戸のつるべやカーテンレール、旗を揚げるポールの上部についているのが定滑車です。
定滑車の役割は、力の向きを変えることです。ロープを下に引くと、荷物は上に上がります。「上に持ち上げる」というやりにくい動作を、「下に引く」というやりやすい動作に変換してくれるわけです。下向きなら自分の体重も使えるので、作業はずっと楽になります。
ただし、力の大きさは変わりません。10kgの水くみバケツを引き上げるには、10kg分の力でロープを引く必要があります。向きの変換だけを引き受ける、正直な道具です。
動滑車(どうかっしゃ)は、固定されず、荷物と一緒に上下に動く滑車です。滑車自体に荷物をぶら下げ、ロープの片端を天井に固定して、もう片端を引き上げます。
このとき、引く力は荷物の重さの半分で済みます。なぜでしょうか。動滑車にかかったロープを見ると、荷物の左右に2本のロープが立ち上がっています。荷物の重さはこの2本のロープが半分ずつ分担して支えているのです。人が引くのはそのうちの1本だけなので、半分の力で足りるという理屈です。
ただし、タダで得をしているわけではありません。荷物を1m持ち上げるには、2本のロープを両方1mずつ短くする必要があるので、ロープを2m引くことになります。力が半分になったかわりに、引く距離が2倍になる——てこや斜面とまったく同じ「力と距離の交換」がここでも起きています。
クレーンの先端をよく見ると、フックの上に滑車がいくつも重なっています。動滑車を増やして荷物を支えるロープの本数を増やすほど、1本あたりの負担は減ります。4本で支えれば力は4分の1、6本なら6分の1。そのぶんワイヤーを長く巻き取る必要がありますが、モーターにとって「弱い力で長く巻く」ことは得意なので、この交換は大歓迎なのです。
定滑車と動滑車を組み合わせれば、「向きを変える」と「力を減らす」を同時に実現できます。重い物を扱う機械の中では、ほぼ必ずこの組み合わせが働いています。
見分け方はシンプルです。滑車が動かないなら定滑車、荷物と一緒に動くなら動滑車。そして「楽になったと感じたら、そのぶんどこかで長く引いているはず」と考えると、滑車の問題は間違えにくくなります。