執筆: 山野 健太 / 公開: 2026年8月27日 / 更新: 2026年10月10日
糸におもりをつけて揺らすだけの振り子は、小学5年の理科で登場する実験の定番です。単純な道具なのに、調べてみると直感に反する結果が出てきます。重いおもりでも軽いおもりでも、大きく振っても小さく振っても、1往復の時間がほとんど変わらないのです。
振り子が1往復するのにかかる時間を周期と呼びます。実験で「おもりの重さ」「振れ幅」「糸の長さ」をそれぞれ変えて周期を測ると、結果はこうなります。
周期が糸の長さだけで決まり、重さや振れ幅によらない——この性質を振り子の等時性と呼びます。なお、振れ幅を極端に大きくすると周期はわずかに長くなるため、正確には「振れ幅が小さいときに成り立つ性質」です。学校の実験で振れ幅を控えめにするのは、このためです。
不思議に感じるのは「重いおもりのほうが速く振れそう」という直感があるからです。たしかに重いおもりには大きな重力がはたらきます。ところが、重い物は動かしにくさ(慣性)も同じだけ大きいのです。引く力が2倍になっても、動かしにくさも2倍になるので、結果として動きは変わりません。これは「重い物も軽い物も同じ速さで落ちる」という落体の法則と同じ理屈です。
等時性の発見者として伝えられているのが、イタリアの科学者ガリレオ・ガリレイです。教会の天井から吊るされたランプが揺れるのを見て、自分の脈拍で時間を計り、揺れが大きいときも小さくなってからも往復時間が変わらないことに気づいた——という逸話が残っています。伝承としての側面が強い話ですが、「正確な時計がない時代に、体の脈で周期を測った」という発想は、観察の工夫として今でも学ぶところがあります。
「同じ長さなら、何度往復しても同じ時間」という性質は、時間を刻む道具にぴったりです。振り子時計は、振り子の一定な周期で歯車を少しずつ進めることで時間を測ります。17世紀に発明されてから水晶時計が普及するまでの約300年間、人類の標準的な時計であり続けました。
ブランコは人間が乗る大きな振り子です。座って乗っても立って乗っても、鎖の長さが同じなら揺れのリズムはほぼ同じ。ただし立ち乗りすると体の重心が上がり、振り子としての実質的な長さが短くなるため、揺れのテンポは少し速くなります。「長さが周期を決める」ことを、遊びながら確認できる例です。
振り子が1往復する時間(周期)は、式で求められます。
周期 = 2π × √(振り子の長さ ÷ 重力加速度)
長さは支点からおもりの重心までの距離、重力加速度は地表で約 9.8 m/s² です。式の中に、おもりの重さも振れ幅も出てきません。ここに「重さを変えても周期は変わらない」という性質がそのまま表れています。
この式を逆に使うと、ほしい周期から長さを設計できます。1往復を 1 秒にしたいなら長さは 約 25 cm、1往復 2 秒(片道 1 秒でカチ、カチと刻む時計の振り子)なら 約 1 m です。振り子時計がどれも似た背丈をしているのは、この 1 m という長さが理由です。
長さと周期は比例しません。ルート(平方根)が付いているので、長さを 4 倍にして、ようやく周期が 2 倍になります。25 cm の振り子を 1 m に伸ばすと、周期は 1 秒から 2 秒になります。
鎖の長さが 2.5 m のブランコなら、計算上の周期は約 3.2 秒です。実際に測るときは、10往復の時間をストップウォッチで測って 10 で割ります。1往復だけ測ると、押したタイミングのずれがそのまま誤差になるためです。
座ってこぐより立ってこぐほうがテンポが速くなるのは、立つと体の重心が支点に近づき、振り子としての長さが短くなるからです。式のとおり、長さが短くなれば周期も短くなります。
なお、等時性(振れ幅によらず周期が同じ)が成り立つのは振れ幅が小さいときだけです。目安として 15 度を超えたあたりから、実際の周期は計算値より少しずつ長くなっていきます。
振れ幅が変わっても、1往復にかかる時間(周期)が変わらないという性質です。大きく揺らしても小さく揺らしても同じリズムで往復するため、振り子時計の基準に使えます。ガリレオが発見しました。
糸の長さ(と重力の大きさ)だけです。糸を長くすると周期は長くなります。正確には周期は糸の長さの平方根に比例するので、長さを4倍にすると周期は2倍になります。
変わりません。重いおもりも軽いおもりも同じ周期で往復します。重さが増えると引く力も増えますが、動かしにくさ(慣性)も同じだけ増えるため、打ち消し合います。