執筆: 山野 健太 / 公開: 2026年8月27日 / 更新: 2026年10月10日
てこの原理は、小学6年の理科で学ぶ「力のはたらき」の中心となる考え方です。長い棒を1本使うだけで、大人でも持ち上げられない重い物を動かせる——この不思議を、順番に見ていきます。
てこには、名前のついた3つの点があります。
シーソーを思い浮かべてください。真ん中の固定された部分が支点、自分が座って押し下げる場所が力点、相手が持ち上がる場所が作用点です。
てこの効き目を決めるのは、支点からの距離です。同じ重さでも、支点から遠い位置にあるほど、棒を回転させるはたらきは大きくなります。
体重の軽い子どもがシーソーの端に座り、大人が支点の近くに座ると、つり合ったり、子ども側が下がったりします。これは「重さ × 支点からの距離」で回転のはたらきが決まるからです。距離が2倍になれば、半分の力で同じはたらきになります。
つまり、支点から力点までを長く、支点から作用点までを短くとれば、加えた力は何倍にも増幅されて作用点に伝わります。バールでくぎを抜くとき、柄の端を持つほど楽になるのはこのためです。
3つの点の並び順によって、てこは3種類に分けられます。
力点—支点—作用点の順に並びます。はさみは指で握る場所が力点、ねじの部分が支点、刃先が作用点。厚紙を切るとき刃の根元(支点の近く=作用点が支点に近い)を使うと楽に切れます。
支点—作用点—力点の順です。作用点がいつも支点と力点の間にあるので、必ず力が増幅される「得をする」てこです。せんぬきは、ふちが支点、王冠に当たる部分が作用点、握る柄が力点です。
支点—力点—作用点の順です。力は増幅されず、逆に小さくなりますが、そのかわり細かい動きを大きな動きに変換できます。ピンセットが繊細な作業に向くのは、力より動きの精密さを優先した道具だからです。
てこを使うと力は小さくて済みますが、そのぶん力点を動かす距離は長くなります。半分の力で持ち上げるには、2倍の距離だけ棒を動かす必要があります。力の面で得をした分、距離の面で支払っている——これは物理全体を貫く大事な考え方で、滑車や斜面でも同じ交換が起きています。
てこのつり合いは、次の式ひとつで計算できます。
力点の力 × 支点から力点までの距離 = 作用点の力 × 支点から作用点までの距離
左右が等しいときにつり合い、力点側が大きければ物が動きます。距離は必ず支点からの距離で測ります。
くぎ抜き(バール):柄の端まで 40 cm、爪からくぎまで 4 cm とすると、距離の比は 10 : 1。50 N(約 5 kg 分)の力で柄を押すと、くぎには 500 N(約 50 kg 分)がかかります。柄の端を持つほど楽になる理由が、この比で説明できます。
はさみ:支点から指まで 8 cm、支点から刃の当たる位置まで 2 cm なら 4 倍。同じはさみでも、刃の根元(支点から 1 cm)で切れば 8 倍になります。厚紙が刃元でよく切れるのは、切れ味ではなく距離の比の問題です。
ピンセット(第3種):支点から指まで 3 cm、支点から先端まで 9 cm とすると、先端に伝わる力は指の力の 3 分の 1 に減ります。そのかわり指を 1 mm 動かすと先端は 3 mm 動きます。力を捨てて動きの大きさを買っている、と考えると分かりやすいでしょう。
バールで 500 N を出したとき、柄を 10 cm 動かすと、爪の側は 1 cm しか動きません。両方を「力 × 動かした距離」で計算すると、
力点側:50 N × 0.10 m = 5 / 作用点側:500 N × 0.01 m = 5
ぴたりと一致します。力は 10 倍になっても、動かす距離が 10 分の 1 になるので、差し引きゼロです。てこが増やしてくれるのは力だけで、仕事(力 × 距離)は増えていません。滑車でも斜面でも同じことが起きます。
実験用てこでつり合うおもりの重さを求める問題や、ばねばかりで引く問題の解き方は、例題つきでてこの問題の解き方にまとめています。
支点(してん)といいます。棒をささえ、回転の中心になる点です。シーソーなら真ん中の固定された部分が支点です。
力点(りきてん)といいます。はさみなら指で握る場所、バールなら柄の端を持つ場所が力点です。
作用点(さようてん)といいます。はさみなら刃先、くぎ抜きならくぎに当たっている部分が作用点です。
回転のはたらきが「力 × 支点からの距離」で決まるためです。支点から力点までを長く、支点から作用点までを短くとると、加えた力は距離の比の分だけ増幅されて作用点に伝わります。そのかわり力点を動かす距離は長くなります。
せんぬきや空き缶つぶしです。支点—作用点—力点の順に並ぶ「第2種のてこ」で、作用点がいつも支点の近くにあるため、加えた力が必ず大きくなって伝わります。